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第3章 14 素敵なダイニングバー

last update Last Updated: 2026-01-28 15:32:02

 隆司さんと約束してしまった。

「お姉ちゃんに連絡しないと……」

スマホをタップして家に電話を掛けると、4コール目で姉が電話に出てくれた。

「もしもし、お姉ちゃん?」

『あら、どうしたの? 鈴音ちゃん』

「ごめんね。実は今日昔の知り合いの人とばったり会って、食事して帰る約束しちゃったの」

『あらそうなの? 今夜は鈴音ちゃんの好きなグリーンカレーを作ろうとしていたんだけど……』

「え? グリーンカレー? そうだ。亮平も好きだよ? 夕食に誘ってみたら?」

『そうね……それじゃ誘ってみるわね。じゃあ鈴音ちゃん、今夜は遅くなるのよね? 気を付けて帰って来るのよ?』

「うん、分かった。それじゃあね」

姉との会話を終えて電話を切ると、再び空しい気持ちになった。

「お姉ちゃん……やっぱり迷わず亮平のこと誘うんだ……」

すっかり冷めて生ぬるくなったコーヒーを口にするとポツリと呟いた――

****

「お疲れさまでした。お先に失礼します」

まだ店舗に残っている社員の人達に挨拶をすると、駅に向かって歩き出した。

腕時計を見ると時刻は20時15分。約束の時間は20時半に南口の改札だから少し待つことにるかもし
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